以前より黒い噂の絶えない中国製アプリ、その中でもとりわけ世界中で愛用されているWeChatはビジネスツールとして大活躍しているのですが、中国政府による監視などがかねてより噂となっていました。
その監視行為、つまり中国政府がWeChatでの通信内容を検閲しているとして、トロント大学が提出したレポートがニュースとなっています。
コロナ関連で露呈
トロント大学のシチズンラボ研究員らは先日、中国製チャットアプリであるWeChatが中国政府によって検閲されており、20,000ワード以上のキーワードをブロックしている事が研究で明らかになったと発表しました。
彼らは新型コロナウイルスのパンデミックが世界中に広がり始めた今年1月から5月の間、複数のダミーアカウントを使用したグループチャットを利用して、どのようなキーワードや条件で検閲が行われているのかを調査しています。
具体的には、カナダで発行したアカウントで中国国営のメディアや中国国内のニュースメディア、香港と台湾のニュースサイトの記事内容を、中国で発行したアカウントで正常に受信できるかどうかをテストします。
すると、特定のキーワードを含んでいたり、独立したキーワードなら問題ないものの複数のキーワードを含む内容のものが受信できず、WeChat側で特定のキーワードまたはその組み合わせを検閲し、不正に送信を妨害している事が明らかとなりました。
わかりやすい例として、今年3月に中国政府を批判する記事を掲載し直後に行方不明となった不動産の大物有名人、レン・ジチアン氏(Ren Zhiqiang)について、彼の名前である「Ren Zhiqiang」というキーワードは問題なくても、「missing(行方不明),Ren Zhiqiang」などとする内容は送信する事ができませんでした。
企業としてWeChatを運営するTencentがこのような検閲をする意味はないですが、こうした政府の悪行と考えられる内容を発信されると困る中国政府が、Tencentに圧力をかけてこのような検閲を実現しているのではないか?と考えられています。
こうした検閲されるキーワードの中には、「mask diplomacy(マスク外交)」「WHO」「Red Cross(赤十字)」「bioweapon(生物兵器)」「virus(ウイルス)」「government(政府)」といったものが含まれており、中国政府などとコロナウイルスを結びつける内容を禁止している事がわかります。
また世界中に感染拡大してからはアメリカと中国の関係に関する内容にまで波及し、「Trump(トランプ大統領)」という単語すら検閲対象となっており、中国がとんでもない隠蔽体質である事を自ら説明する結果となっています。
まとめ
この調査結果は国際問題になる可能性を十分秘めており、以前より中国国内でのみ行われていた検閲が世界中でも行われている証拠となり得るので、ユーザーによる批判から外交問題などに発展する可能性は、現状の冷え切った米中関係を考えると十分あり得るでしょう。
この検閲がコロナを機に始められたものだとは考えにくく、以前より行われていた検閲がコロナの感染拡大によって露呈した、という印象が強く、国際的に中国がこのような検閲を各国に批判されるのは時間の問題と考えられます。