ごきげんよう、菊太郎です。
アメリカ政府はAppleに対して「iPhoneの暗号化を解除してくれ」と長いこと要請していましたが、Appleはそれに反対。
政府とAppleは長らく対立していましたが、今月ついに政府が「暗号化は解除しなくてもいい」と決定を下したため、Appleの勝利という形でこの対立が終了しました。
それにしても、なぜ暗号化を巡ってここまで対立してきたのでしょうか?今回はそれについて分かりやすく解説します!
暗号化は正義か悪か?
普段何気なく使っているiPhoneには、メッセージや写真、メールなどプライベートなものがたくさん入っていますよね。
中には他人に見られたくないものもたくさんあると思いますが、もしもクラッカー(悪いハッカー)に自分のiPhoneの中を見られたら…と思うと、ちょっと恐くなりませんか?
でもご安心を。実はiPhoneの中に入っているデータには強力な暗号化が施されているため、絶対に他人に見られる事はありません。
クラッカーはもちろん、政府や警察、Appleすら見ることは不可能と言われています。
ですが政府はAppleに対して「暗号化を解除しなさい」とずっと要請してきました。もちろんAppleは「個人のプライバシーが守られなくなる」と、これに反発。
それによって、
暗号化の解除を求める政府 VS 暗号化の解除に反対するApple
という図式がずっと成り立っていました。
なぜ個人のプライバシーを脅かす可能性があるのに政府は暗号化を解除させようとしているのかと言えば、それは「事件解決のため」。
政府は事件が起きたとき、解決に向けて容疑者のデータ(メールなど)をAppleに要求することが出来ますが、このデータに暗号化が施されていると政府は解読することが出来ません。
結果的に事件解決が遅れてしまったり、酷いときには迷宮入りしてしまう恐れがあるため、政府としては何としてでも暗号を解除してもらう必要があったわけです。
分かりやすく一例を挙げると以下の様になります。
武装組織がテロを起こし、ビルが破壊されて大量の被害者が出る
↓
政府は怪しい容疑者を逮捕
↓
でも容疑者が犯人だという証拠はどこにもない
↓
容疑者の持っているiPhoneに入っているメールや写真を調べれば、テロリストかどうかわかるかもしれない
↓
でもiPhoneに暗号化が施されているから、中に入っているメールや写真が見えない
↓
99%犯人なのに、証拠がないから逮捕できない
↓
迷宮入り( ゚Д゚; )
こういった事態を防ぐために、政府はAppleに対して暗号化を求めてきました。
しかしAppleは、「ユーザーのプライバシーは大切。Appleを信じてくれているユーザーを裏切ることは出来ない」「暗号化を止めたらクラッカーなどに狙われる恐れが出てくるので、余計に犯罪が増えるかもしれない」として真っ向から反発。
議会でも賛成派の議員と反対派の議員に分かれるなど、カオスな状態になっていました。
しかし10月10日にホワイトハウスは、「事件が起きた時にAppleは政府に協力しなければいけないけれど、暗号化は解除しなくてもいい」と決定。
これによって、Appleは政府から暗号化解除を強要されなくなりました。
しかしそれで困るのは公安当局。事件が起きたとき提供してもらえるデータが暗号化されていては、せっかく手に入れたデータを有効活用することが出来ません。
そこで公安当局などは、「iPhoneの持ち主は、当局に求められたら強制的にパスワードを言わなければいけない法案」などを議会に求めたりして、暗号化されていても事件を解決出来るように応対するのではないかと予測されています。
確かにテロが起きて町が爆破でもされたら、個人のプライバシーうんぬんの問題では無くなってしまうので、警察としても必死にならざるを得ないですよね…。
今回の暗号化に関してはAppleの勝利となりましたが、中国やヨーロッパではAppleに対して「暗号化を禁止しろ」「政府がiPhoneのデータに侵入できるようにしろ」などと求めているので、Appleは引き続きプライバシー保護に向けて、これらの政府に立ち向かっていく考えを見せています。
なかなか難しいところではありますが、一部の政府はiPhoneのデータの暗号化が解除されたら「政府に反抗的な平和活動家の粛正」「政府に都合の悪い団体(企業)への弾圧」などに使う事が簡単に予測できるので、暗号化の解除は慎重にならざるを得ないという事情もあるようです。
確かにテロなどから国民を守るのも大切ですが、個人のプライバシーを守るのも大切。
テロや政府の干渉もなく、安心してiPhoneを使えるような社会になって欲しいですね。
※内容を分かりやすくするため、一部簡略化した記述があります。